第2回泉州学生演劇祭

閉幕・第2回泉州学生演劇祭!大阪南部から芽吹く高校演劇の新しい可能性。

「大阪南部から演劇をもっと元気にしたい」
そんな想いを旗印に、有志のメンバーによって立ち上げられた泉州学生演劇祭(SSPF)。
その記念すべき第2回が、1月12日、大阪府高石市のアプラ小ホールにて開催されました。

(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)

個性あふれる6団体の上演&講評をレポート!

講評2
今回のポイントは、何と言っても、
演劇集団キャラメルボックスの大内厚雄さんによる講評。
本番が終わると、上演団体は大内さんの待つ楽屋へ。
その様子を、簡単ですがご紹介させていただきます。
 
■堺市立陵南中学校演劇部 + 高石市立高石中学校演劇部 合同『今、幸せ。』
アンジェラ・アキさんの名曲『手紙~拝啓十五の君へ~』に乗せながら、
結婚を目前に控えた女性が、様々な悩みに揺れる十五の頃を追憶する物語。
 
今回唯一、中学生を主体としたチームだけあって、
まだまだ舞台上に立つ役者のみなさんは姿勢や動きなど未熟な点が目立ちました。
一方で、終盤、主人公が母親に心情を吐露する場面は、ぐっと胸に迫るものが。
たっぷりともたせた「間」に主人公の言葉にできない想いがつまっていました。
 
■大阪府立堺上高校演劇部『フレンド』
コミュニケーション能力ゼロの女子高生・アヤカが、
偶然出会った変わり者の男子高生・マコトの応援を受けて、友達づくりに励むストーリー。
 
役者は4人ながら、それぞれが個性的な演技を披露。
特にマコト役の男の子は持ち味を活かしたユニークなキャラクターで
会場を大いに沸かせてくれました。
大内さんも「それぞれが登場人物の個性をしっかり演じ分けられていた」と感心しきりでした。
 
■大阪府立鳳高校演劇部『ログアウト』
FacebookやtwitterなどおなじみのSNS、Webサービスを擬人化して表現しながら、
女優の夢を追う少女の短い人生を描いた作品。
ダンスパフォーマンスを織り交ぜならポップに展開する前半部から一転、
後半は渾身の叫びが観客の胸を揺さぶります。
 
一方、講評委員からは「SNSの特徴を説明する前半が少し長すぎたのでは」という指摘も。
「お客様は何でもない情報部分でも自然と『物語』を探そうとするもの。
主人公が楽しく投稿を繰り返しながらも、どこかで影を感じさせるような表情を見せると、
もっと良かったのでは?」という大内さんからのアドバイスは、
今後の劇作にも大いに役立つものになったと思います。
講評1
■帝塚山学院泉ヶ丘高校演劇部『星の羽衣~それぞれの願い~』
「流しそうめんをすれば願いが叶う」という設定をはじめ、
枠組みにとらわれない発想を活かしたシュールな世界観が非常に印象的でした。
 
一方、その突飛な設定が回収されないまま終わってしまい、
キャラクターの心情や関係性などが表現しきれなかった印象も。
それぞれの場面も、家の中なのか屋外なのかなど舞台設定そのものを
観客としてイメージすることができませんでした。
このあたりは舞台に立つ役者が明確なイメージをもってマイムなどで表していくことが大事ですね。
ぜひ今後の参考にしてもらえればと思います。
 
■伊丹西宮演劇部合同『長靴を履いた猫とあくまでもラブストーリーは唐突に。』
魔女の力を借りて人間になった猫が、雨の中傘をくれた女の子を笑顔にするために奔走する姿と、
若者らしい恋模様を個性あふれるキャラクターと楽しい演技で描いた等身大のラブコメディ。
 
随所に散りばめられたギャグでしっかり観客を沸かせた一方で、
物語の軸となる猫役にパワーが足りなかったのが、残念でした。
また、滑舌に難のある役者が多かったのも気になるところのひとつ。
やっぱり基本を磨くということは、お客様を楽しませる上で大事なこと。
お芝居を好きだという気持ちは十分に伝わる舞台でしたので、
ぜひ今後も練習に励んで、また新しい作品を見せていただければと思います。
 
■精華高校演劇部『全校ワックス』
毎年、コンクールでも多数の高校が上演する高校演劇の定番のひとつ。
ワックスがけの1時間の間に、偶然同じチームになった5人の女子高生が
心を通い合わせていくプロセスを、軽妙な会話を通して描きます。
 
終盤、告白ごっこと称して、それぞれが心の中に抱える秘密を独白する場面は、
会場全体を気持ちのいい緊張感で包み込む好演。
その分、前半の間延びした空気がもったいなく感じました。
大内さんからは「初対面で気の合わない者同士のわりには、間が長すぎるのでは」という指摘が。
確かに初めて顔を合わせる者同士が場に居合わせれば、
会話の沈黙に耐えられなくて、間をつめたくなるのが人間の心理。
その少しずつの間の長さが積み重なって、芝居全体が冗長になってしまったのかもしれません。
この場面に限らず、演じる上で相手との距離感をどう空気で表すかは非常に重要なポイント。
大内さんからのアドバイスに、生徒のみなさんも深く頷いていました。
講評3
プロの役者さんからこれだけ近い距離で劇作や演技についてアドバイスをもらえるのは、
中高生にとっては滅多にないチャンス。
講評を聞く表情も、みんな真剣そのものです。
 
また、今回から講評委員による表彰も。
主演女優賞には、『全校ワックス』から越知ひかりさん。
助演男優賞には、『長靴を履いた猫とあくまでもラブストーリーは唐突に。』から伊達天翔さん。
助演女優賞には、『ログアウト』から原田有里さん。
さらに審査員特別賞には、堺上高校演劇部が選出されました。
 
演劇がもっともっと盛り上がるためには、
やっぱり面白いお芝居をつくることが一番だと思います。
そのためには、毎日鍛錬を重ね、己を磨き上げるしかありません。
 
SSPFは来年も開催予定とのこと。
ぜひ今回SSPFに参加した団体のみなさんはもちろん、
日本中のゲキ部員の力で高校演劇をもっと盛り上げていきたいですね。
 
では、最後に大内さんのインタビューで締め括らせていただきます。
大内さんの目には、高校演劇はどのように映ったのでしょうか。
すべての講評を終えたばかりの生の声をみなさんにお届けします。

自分の役をいろんな面から深く掘り下げてほしい

大内さん

――「高校演劇を見るのは今回が初めて」とのことでしたが、まずは率直な感想をお聞かせください。

先入観が基本的になかったので、非常に楽しく見させていただきました。高校生でこんなお話をするんだというものもあれば、すごくポップなものもある。いろんな劇団がいろんな芝居をやるのと同じように、いろんな高校がいろんな芝居に挑戦してるんだなあと感心しました。僕も高校時代は演劇部でしたが、当時の僕なんて今のみなさんより全然何も考えていなかった。よく高校演劇がレベルアップしているという話を耳にしますが、実際に高校生の舞台を見て、その意味を実感しましたね。

――高校生がこれからも演劇を続けていく上で、「こんなことをやっておけばいい」というアドバイスがあれば、ぜひお願いします。

まずはいろんな本を読むこと。それを通して、自分の演じる役のいろんな面を考えられるようになってほしいですね。自分の中で役をつくり上げるのは、とても大事なこと。でも、そこで終わるんじゃなくて、自分の中でつくり上げた大事な想いを、30分なり60分なりという短い時間の中で、どう表現すればお客様にいちばん伝わるか考えられるようになってほしいんです。いちばん大事なのは、お客様にわかってもらうことですから。読書は自分の考え方の幅を広げる手段のひとつ。本を読み、いろんな考えを知ることで、演技だけじゃなく日常生活の中でももっと奥行きがでると思います。

――大学3年の時に、一生役者をやっていこうと決意された大内さん。それから約20年にわたってプロとして舞台に立ち続けてこられました。改めて「演劇」の何にそこまで心惹きつけられているのか。大内さんの感じる「演劇」の魅力を教えてください。

それはなかなか一言では言えないですね(笑)。でも、今、パッと浮かんだことは、お客様や共演者と「共感」ができること。これが一番大きいんじゃないかなと思います。親子だって共感するのは難しい世の中じゃないですか。でも、演劇なら同じ舞台の上に立つ役者同士だけでなく、お客様も一緒になって、僕が感じていることを感じてくれる。これこそがもう生の醍醐味ですよね。映画はスクリーンの中の世界ですから、演じる側はお客様と共に感じ合うことはできない。ライブだから演者もお客様も一緒に感じ合うことができる。そこに惹かれて、ずっと演劇を続けているんだと思います。

PROFILE

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そんな大内さんの次回作は寺山修司原作『田園に死す』。

前衛の巨匠・寺山修司の自伝的映画『田園に死す』を寺山作品を世界各地で上演し国際的評価を得ている流山児★事務所が舞台化!

第44回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞した2009年の初演、ファンからの熱い声を受けて実現した2011年の再演に続く、待望の再再演にして、最終上演です。

寺山修司の名前は知っていても作品は見たことないという高校生も多いはず。ぜひこの機会に世界のテラヤマワールドをとくとご堪能あれ。
 

■『田園に死す』

<原作>

寺山修司

<脚色・構成・演出>

天野天街

<キャスト>

大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)、伊藤弘子、小川輝晃、木暮拓矢、さとうこうじ、深山洋貴(Studio Life)、小林七緒、冨澤力、平野直美、沖田乱、中田春介、蒲公仁(個人企画集団*ガマ発動期)、眞藤ヒロシ、柏倉太郎、坂井香奈美、阿萬由美、山下直哉、荒木理恵、山丸莉菜、小寺悠介、竹田邦彦、辻京太、飯塚克之(小年王者舘)、日下部そう、後藤英樹、桜井玲奈、藤村直樹、酒井和哉、藤村一成、小林夢二(少年王者舘)、鶴田理紗、宮川安利、佐原由美、艶嬢さとみ/流山児祥

<公演日程>

2014年2月28日(金)~3月10日(月)

<会場>

下北沢 ザ・スズナリ

<チケット>

前売:4,200円

当日:4,500円 ※当日券の発売は開演の1時間前より

学生券:3,500円(要学生証提示 流山児★事務所、ザ・スズナリでの取扱のみ)

○チケットに関する予約・お問い合わせ

流山児★事務所

TEL03-5272-1785

○大内厚雄さんホームページ

http://www.atsuwo.com/

○流山児★事務所ホームページ

http://www.ryuzanji.com/

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