同校初の快挙達成!鶴見商業『ROCK U!』が全国最優秀賞に!
おはようございます!
興奮のうちに幕を閉じた全国大会から一夜明け、全国高校演劇生にとってまた新しい1年がスタートしました。すでにTwitterではお伝えした通り、最優秀賞に輝いたのは大阪市立鶴見商業高校の『ROCK U!』。ここでは、会場に来れなかった読者の皆様のために、『ROCK U!』に対する講評の模様をお届けします。
(Text by Yoshiaki Yokogawa Photo by Ai Miyazaki, Yoshiaki Yokogawa)
全国に届いたROCKの叫び。
8月2日より3日間にわたって開催された第59回全国高等学校演劇大会。近畿ブロック代表・大阪市立鶴見商業高校『ROCK U!』が、各ブロックから選出された代表12校の頂点に立ち、日本一の栄光を掴んだ。同校の全国最優秀賞は史上初。また近畿勢の全国制覇は、第27回秋田大会(1981年)の追手門学院以来、32年ぶり2回目の快挙。およそ12万4000人の在日コリアンが暮らす街・大阪から生まれた、自らのアイデンティティを求め、ROCKを踏み鳴らす力強いストーリーは、地域や文化の壁を超え、全国の観客の心を打った。
講評審査員である劇作家の平田オリザ氏は「毎週、鶴橋や生野区でヘイトスピーチが行われる中、こういう台本を書いてくれたことに、ありがとうという気持ち」と、難しい国際情勢の中で、極めてデリケートな題材にチャレンジした鶴見商業高校の表現者としての姿勢に賛辞を送った。また、「規律の厳しい集団性の高い朝鮮学校から、自由を求めて日本の学校に来た。それがだらしなさやバラバラさなど自分の求めていたものとは違うことに葛藤する。その構造が非常に深いものになっている。在日を扱った作品は様々あるが、この切り口は初めてじゃないかな」と、作者である趙清香さんの鋭い視点に感心しきり。通常なら主人公ひとりに悩みをすべて背負わせることで心情吐露的台詞が多くなってしまうところを、「スナとミレというふたりの主人公を据えたことで、両者の間で温度差が生まれ対立構造ができた」と設定の妙に舌を巻いた。
同じく審査員の乳井有史氏も「このお芝居はふたつの要素から成り立っている」とした上で、「社会や時代の背景を抜きに芝居を観るなら、クラスがメチャクチャという状況から文化祭というイベントに向けて、対立・構造を経ながら大成功をさせていくという構造。しかし、その背景にはもっと大きな構造があって、最後にロックに向かっていく。そこに感動した」と絶賛。「自由は身勝手や無責任や我儘と非常に近い位置に寄り添っているということをわかっていながら、文化祭を成功させようとするスナの姿を見て、ミレがわからなかった自分らしさの疑問を解いていく、その過程が大事である」と本作の作品としての強みを解説した。これにより、『ROCK U!』は、創作脚本賞とのW受賞となった。
なお、各賞の結果は以下の通り。
●文部科学大臣賞(最優秀賞)
大阪市立鶴見商業高等学校(近畿ブロック代表)
『ROCK U!』
●文化庁長官賞(優秀賞)
長野県丸子修学館高等学校(関東北ブロック代表)
『K』
北海道北見北斗高等学校(北海道ブロック代表)
『ちょっと 小噺。(ちょこばな。)』
沖縄県立八重山高等学校(九州ブロック代表)
『0(ラブ) ~ここがわったーぬ愛島(アイランド)~』
●優良賞
宮城県名取北高等学校(東北ブロック代表)
『好きにならずにはいられない』
栃木県立さくら清修高等学校(関東ブロック代表)
『自転車道行曽根崎心中』
瓊浦高等学校(九州ブロック代表)
『南十字星』
広島市立沼田高等学校(中国ブロック代表)
『うしろのしょうめんだあれ』
高田高等学校(中部日本ブロック代表)
『マスク』
東京都立東高等学校(関東ブロック代表)
『桶屋はどうなる』
徳島県立城ノ内高等学校(四国ブロック代表)
『三歳からのアポトーシス』
島根県立出雲高等学校(中国ブロック代表)
『ガッコの階段物語』
※全12校の結果。同一賞については上演順。
●創作脚本賞 趙 清香(大阪市立鶴見商業高等学校)
●舞台美術賞 東京都立東高等学校
●内木文英賞(特別賞) 栃木県立さくら清修高等学校
なお、鶴見商業高校、長野丸子修学館高校、北海道北見北斗高校、八重山高校の4校は、8月24日・25日に国立劇場大劇場で開催される全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演への出場が決定。
また、本大会における鶴見商業高校の上演は、9月21日(土)15時よりNHK-Eテレにて放送を予定している。