第59回全国高等学校演劇大会に行ってみた。【3日目】

ついに上演校12校のステージがすべて終了しました。
あとは審査員の先生の講評を待つばかりです。
果たして全国2500の演劇部の頂点に立つのは、どこの高校か。
その前に、本日上演を行った2校の模様をお届けします。

(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)

沖縄県立八重山高校『0(ラブ) ~ここがわったーぬ愛島(アイランド)~』

八重山
最終日一発目を大いに盛り上げたのが、
沖縄県立八重山高校の『0(ラブ) ~ここがわったーぬ愛島(アイランド)~』。
個性豊か、の一言では表現しきれないほど強烈な個性を持った9人のクラスメイトが
文化祭の出し物をめぐって喧々諤々と意見を交わし合う。
ストーリーとしては、3行で説明できそうなくらいシンプルな内容なのに、
これだけ夢中になれるのは、八重山高校演劇部のメンバーが、
何よりまず自分たちが舞台に立つこの瞬間を楽しんでいるからこそ。
 
引っ込み思案の委員長が、可愛がっていたヤギのスープを
お腹が空いていたせいで思わず食べてしまった過去を告白したり、
非の打ちどころのないイケメンサッカー部員が、
実はハウツー本を鵜呑みにしているだけのダサ男だとわかった途端、
女子の態度が突然冷たくなったり。
笑いのツボを押さえた人物造形は秀逸で、
誰が一番お気に入りのキャラクターか、友達同士で意見を交わすだけでも楽しそう。
「『送料無料(一部地域を除く)』ってその一部地域に石垣島入ってるばぁよ!」など、
田舎で暮らす高校生ならではの台詞も実によく効いています。
難しいテーマは一切なし。観る人が思い切り笑ってくれたらという
八重山高校演劇部の信念が、地域の垣根を超え、全国の高校生に届いた60分でした。
 
観客からも「面白かった!」というストレートな感想が相次ぎ、
「キャラクターが個性的で楽しかった」、「牛好きの男子高生が良かった」と、
強烈な登場人物たちへのラブコールで盛り上がっていました。

島根県立出雲高校『ガッコの階段物語』

出雲
そして、1年に及ぶ全国高校演劇生の激闘のフィナーレを務めたのが、
島根県立出雲高校の『ガッコの階段物語』です。
階段の前で立ち止まっている人を元気づけるために結成された“階段部”。
そんな突拍子もない設定ながら、合間に挟まれるエピソードはどれも階段の設定を活かしながら
心にキュンと沁み渡る内容で、切り口の目新しさに頼らない、書き手の堅実な筆力が光った一作でした。
 
『想い出がいっぱい』の歌詞を引用しつつ、階段を人生に見立てるまでは定石ですが、
そこからもうひとつ階段に大きな意味が隠されていた展開は、思わず膝を打つ巧妙さ。
今回、直接は明言しないものの、東日本大震災をモチーフにした作品が目立ちましたが、
本作でもブルーシートを使って津波を表現。
階段を上るということは生き残ること、という力強いメッセージに、多くの観客が心打たれていました。
 
観客からも「前半と後半のギャップが良かった」、「椅子を使った登場シーンが面白かった」、
「サザンの曲を多用している理由が最後にわかって、すごく納得した」、
「ブルーシートで津波を表しているところにビックリした」と、
細部までこだわりぬいた演出プランに評価の声があがりました。

上演校の皆様に最大の敬意をこめて

上演校12校の皆様、本当にお疲れ様でした。
全力を尽くせた人、後悔が残ってしまった人、様々だと思います。
だけど、みなさんが過ごした全国までのこの長い道のりは本当にかけがえのないもので、
きっとこれからみなさんが生きていく中で、道に迷った時、転んで立ち上がれない時、
行く手を示す一つ星のような存在になってくれることと思います。
 
さあ、いよいよ今から講評がスタートします。
また、速報をお届けしますので、全国の高校演劇ファンのみなさま、もうしばらくお待ちください!

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