第61回全国高等学校演劇大会に行ってみた。【3日目】
外に出ればうだるような炎天下。
まさに熱戦の夏にふさわしい酷暑の中、ついに出場12校の上演がすべて終わりました。
講評までの間、『ゲキ部!』では最終2校の上演をみなさんと一緒に振り返りたいと思います。
(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)
富山第一高校『高校生 なう』
今や高校生の生活に欠かせないLINEやTwitterの弊害を描いた本作。
昨日の『ちいさなセカイ』でもLINEの画面をプロジェクターで投射するという同様の演出で、
高校生とSNSの距離感を描いていましたが、こちらはより真面目にテーマを浮き彫りにしていきます。
叱りつける先輩たちの前で、一年生たちは神妙な顔をしながらLINEで陰口を叩きあう。
「顔が見えたら言いにくい」とその場にいながらLINEを交わし合う姿は、
大人から見れば過剰表現のように見えるのですが、
生徒講評委員からは「私もやったことがある」という声も。
これが今の高校生の「なう」というものなのでしょうか。
女子が陰湿なSNS地獄に絡め取られている反面、
対照的に男子はどこまでも能天気で、放送部の新城などLINEなんてどこ吹く風という様子。
このSNSに対する温度差もやはり男女間の違いなのかもしれませんね。
手軽なコミュニケーション手段であったはずのSNSが、自分たちの生活を不自由にさせている。
その皮肉な矛盾が、観る人たちそれぞれに問題提起を投げかけていたように思います。
生徒講評委員の公開討論会でも、
「自分もSNSにのめりこんでいるところがあるから、
誰かに文句を言われているんじゃないかなという気持ちはよくわかる」
「誰しもが一度は思ったことのある世界なので入りやすかった」と共感の声もあれば、
「仮面をつけているのが何が悪いんだろうって思う。つけなきゃ戦国時代になる。
縄文人の頃からみんな仮面をつけてきた。今の人たちは気にしすぎ」と真っ向から異議を唱える者も。
身近なテーマだからこそ議論を呼びやすかったのかもしれませんね。
富山第一高校演劇部のみなさん、お疲れ様でした!
水口東高校『ミーティングから始めよう!』
長かった2014-15シーズンのフィナーレを飾るのは、奇しくもホストである滋賀県の水口東高校。
滋賀県の愛唱歌であるという『琵琶湖周航の歌』から始まる物語は、
水口東高校から来場者に対する「ようこそ滋賀へ」というもてなしの心を感じさせます。
特に印象的だったのが、序盤の立ち上がり。
フリップを使って紙芝居のように状況を説明する三人組がきちんと笑いをとったことで、
冒頭から完全に会場を味方につけた感がありました。
登場する演劇部員たちも個性豊かで、会話のやりとりもリズミカル。
音楽に乗せて舞台装置を組んでいく演出など、観客を楽しませる工夫が随所に散りばめられていました。
そして最後は、冒頭に登場した和輝とはるなの想いが通じ合う場面に。
ギャグのように登場したダニエルの絆創膏が、きちんと印象に残っていることで、
キーアイテムとしてより強い効果を果たしていました。
こうした小道具の使い方も含め、全体を通して芝居づくりに安定感があったように思います。
生徒講評委員の公開討論会でも、
「大道具の箱が原色でフラフープもカラフル。高校生の楽しい感じがよく出ていた」
「一人ひとりの役者さんの声や表情の変化がすごいから、どこを見ていても楽しい。
見入っているうちにあっという間に終わった」
「鯉のエサのようにアンケートに群がるところとか、あるあると思った」
と同じ演劇部の物語ということもあって、非常に「見やすかった」という声が多数を占めていました。
水口東高校演劇部のみなさん、お疲れ様でした!
さあ、今年の栄冠は誰の頭上に?
すべての上演を終え、今まさに審査員の先生方による厳正な審査が行われています。
タイムスケジュールによると、講評のスタートは15:10から。
『ゲキ部!』では最後までその模様をお届けしますので、
みなさんもぜひTwitterをチェックしておいてくださいね。