最強のお姉ちゃんが今年の高校演劇のヒロインに!大分豊府、悲願の全国制覇!
傑作力作の揃い踏みで、「どこが最優秀かまったく予想できない」と関係者からの声が上がるほど白熱した今大会。出場12校の頂点に立ったのは、大分豊府高校でした。顧問・中原教諭を中心とした固い団結力を武器に、2014年も春フェスに出場を果たすなど、強さを見せつけていた大分豊府ですが、意外にも全国出場は今回が初めて。初出場で初の栄誉に輝きました。
(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)
会場を笑いと感動で包んだ最強姉ちゃんの活躍劇。
『女子高生』の歓喜から1年。激戦を制したのは、同じく九州の有力校だった。中原久典教諭率いる大分豊府高校が演じた『うさみくんのお姉ちゃん』は、アンパンマンに似ているという気が強くて粗雑だけれど面倒見の良い宇佐美くんのお姉ちゃんが、中学時代のトラウマで女子といるとお腹が痛くなってしまう溝呂木くんと出会うことで巻き起こる、パワフルでハートウォーミングな学園コメディだ。
講評審査員の片山稔彦氏は「アンパンマンのお姉さんと弟の健太くん、そして溝呂木くんのチームワークがとっても素敵で引きこまれた」と絶賛。「非常に安定感のある、安心して観られるお芝居」と同校の基礎力の高さに拍手を送った。その上で、片山氏が注目したのが、同作の構造だ。「内容的には大したことは起こらない。日常的な生活の一部なんですよね」としながら、「だからその日常の出来事をいかに切り取ってお芝居にしていくか」が大事であることを強調。同作は、「細かい演出で劇的な仕上げをしていける見本のようなお芝居」と派手さのない展開ながら、観る者を存分に楽しませた同作の演出力に舌を巻いた。
一方、舞台美術家である島川とおる氏は、高校演劇の定番というべき教室のセットに対し、「空間全体で見た場合に、上がすっからかん。バランスを工夫した方がいい」と指摘。奥のホリゾントと合わせた上で、吊りものを使うことで「上と下のボリュームのバランスをとった方がいい」とアドバイスを送った。また、舞台面に対して教室の正面の壁が並行になるのではなく、敢えて斜めになるように計算されたつくりには、「教室のセットも進化しているなと思いました」と感心。「臨場感があるようなアングルをつくって舞台と客席の距離を縮めた。アングルがあった方が、教室の中に踏み込んだように思える」とセットひとつで印象が一変する舞台美術の奥深さについて言及した。
また、かの有名な『アンパンマンマーチ』が強力なフックとなる展開について、片山氏は「アンマンパンの歌詞も素敵だけど、ちょっと乗っかりすぎているのが気になる」と一定の危惧を示した。とは言うものの、弱者に優しい目線を向けたストーリーに「おじさんは泣きました」と満足そうな表情を浮かべ、「アンパンマンのお姉さんのファンになりました」と相好を崩した。
同校の最優秀賞受賞により、昨年に続き九州勢が大会二連覇。また、大分代表が全国を制するのは史上初の快挙となった。
なお、各賞の結果は以下の通り。
●文部科学大臣賞(最優秀賞)
大分県立大分豊府高等学校(九州ブロック代表)
『うさみくんのお姉ちゃん』
●文化庁長官賞(優秀賞)
大阪府立緑風冠高等学校(近畿ブロック代表)
『太鼓』
北海道札幌琴似工業高校定時制(北海道ブロック代表)
『北極星の見つけかた』
香川県立丸亀高等学校(四国ブロック代表)
『用務員コンドウタケシ』
●優良賞
佐賀県立佐賀東高等学校(九州ブロック代表)
『ママ』
千葉県立松戸高高等学校(関東ブロック代表)
『CRANES』
鳥取県立米子高等学校(中国ブロック代表)
『学習図鑑 見たことのない小さな海の巨人の僕の必需品』
福島県立いわき総合高等学校(関東ブロック代表)
『ちいさなセカイ』
長野県松川高等学校(関東ブロック代表)
『べいべー』
神奈川大学付属中・高等学校(関東ブロック代表)
『恋文』
富山第一高等学校(中部日本ブロック代表)
『高校生 なう』
滋賀県立水口東高等学校(近畿ブロック代表)
『ミーティングから始めよう!』
※全12校の結果。同一賞については上演順。
●創作脚本賞 中原 久典(大分県立大分豊府高等学校)
●舞台美術賞 北海道札幌琴似工業高校定時制
●内木文英賞(特別賞) 神奈川大学付属中・高等学校
なお、大分豊府高校、緑風冠高校、札幌琴似工業高校定時制、丸亀高校の4校は、8月29日・30日に国立劇場大劇場で開催される全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演への出場が決定。
また、本大会の模様は、9月5日(土)15時よりNHK-Eテレにて放送を予定している。