栄冠は君に輝く!東播磨が全国初出場で最優秀賞!!
完成度の高さが光る上演が相次ぎ、混戦必至となった第63回全国高等学校演劇大会。最優秀賞の栄冠に輝いたのは、創部以来初の全国出場を果たした兵庫県立東播磨高等学校『アルプススタンドのはしの方』でした。同級生が甲子園の舞台で輝いているのをアルプススタンドで見つめる4人の高校生。試合の展開と共に徐々に変化していく心模様をユーモラスかつセンチメンタルに描き、文句なしの全国制覇となりました。ここでは各賞の結果と共に、最優秀校の講評をレポートします。
(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)
高校生のリアルな心情を描いた等身大の青春劇が栄光の頂点に!
05年、友部高校演劇部顧問として全国大会出場を果たした審査員の来栖敏行氏(現:石岡第一高校教諭)は「幕が上がったときにセットが端正にできていて、無理なくお芝居の世界に入り込めていけた」と舞台上に甲子園のアルプススタンドを再現した同校の製作力の高さを評価。冒頭から続く演劇部女子ふたりの会話について「すごく流暢で、自然な会話で面白さが伝わってくる」と称え、「特別なことをやっているわけじゃないんですけど、すーっと気持ちがお芝居の中に入っていけて良かった」と賞嘆した。
最初は何となく観戦していた4人の登場人物を「一生懸命頑張れない存在」とした上で、「最後はみんなで拍手をする、その流れもスムーズで、よくできていた」と同校の秀逸な構成力を褒めたてた。
また、日本大学芸術学部演劇学科教授を務める藤崎周平氏は、自らも阪神ファンで甲子園の観戦経験もあることを明かした上で、アルプススタンドについて「高さがない」と指摘。「4~5つ脚立を置いて、脚立の上でやっても良かったのかな」と代替案を提示した。また、観戦風景の演出についても「高校野球をご覧になった方ならわかると思うんですけど、球場自体が一球ごとに呼吸をしていくんですよ。その呼吸が残念ながら感じられないんですね」と惜しんだ。
一方で、アルプススタンドから一望できる応援団や生徒、そして試合中の選手の光景について「日本の縮図かもしれない」と表現し、「こちらに様々な想像力を与えてくれた。とても刺激的で面白い舞台だったなと思います」と豊かな解釈で戯曲に光を当てた。
紀伊國屋個人賞の受賞経験も持つ舞台美術家の伊藤雅子氏は、アルプススタンドについて「高さがほしいなと思いました」と同調。また、段ボールなど荷物置き場になっているベンチに対し、「ベンチを置かないでフェードアウトするためのものなのかと思ったけれど、そうするとちょっと嘘っぽく見えてしまった」と言及。もっと自然に途中でベンチをなくすためには「(他にも同級生が座っているだろうから)そこに座っている人の荷物が置いてあっても良かった」と提案した。
ただ、同校の総合力の高さについては太鼓判を押し、「非常に楽しく惹きこまれながら観させていただきました」と満足そうな笑顔を浮かべた。
なお、各賞の結果は以下の通り。
●文部科学大臣賞(最優秀賞)
兵庫県立東播磨高等学校(近畿ブロック代表)
『アルプススタンドのはしの方』
●文化庁長官賞(優秀賞)
埼玉県立秩父農工科学高等学校(関東ブロック代表)
『流星ピリオド』
茨城県立日立第一高等学校(関東ブロック代表)
『白紙提出』
沖縄県立向陽高等学校(九州ブロック代表)
『HANABI』
●優良賞
千葉県立八千代高等学校(関東ブロック代表)
『煙が目にしみる』
徳島市立高等学校(四国ブロック代表)
『どうしても縦の蝶々結び』
宮城県名取北高等学校(開催県代表)
『ストレンジ スノウ』
明誠学院高等学校(中国ブロック代表)
『警備員 林安男の夏』
福島県立相馬農業高等学校飯舘校(東北ブロック代表)
『-サテライト仮想劇-いつか、その日に、』
岐阜県立加納高等学校(中部日本ブロック代表)
『彼の子、朝を知る。』
北海道北見緑陵高等学校(北海道ブロック代表)
『学校でなにやってんの』
埼玉県立新座柳瀬高等学校(関東ブロック代表)
『Love&Chance!』
※全12校の結果。同一賞については上演順。
●創作脚本賞 林彩音・村端賢志(徳島市立高等学校 )
●舞台美術賞 福島県立相馬農業高等学校飯舘校
●内木文英賞 北海道北見緑陵高等学校
なお、東播磨高校、秩父農工科学高校、日立第一高校、向陽高校の4校は、8月26日(土)・27 日に国立劇場大劇場で開催される第28回全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演への出場が決定。
また、本大会の模様は、9月9日(土)15時よりNHK-Eテレにて放送を予定している。