兵庫県立姫路工業高校
姫路工業高校の練習に行ってみた。
他の演劇部とは一線を画した活動ぶりでファンを増やす姫路工業高校演劇部。
前回の記事も大きな反響を呼びましたが、
気になるのは「日頃、姫工はどんな練習をしているの?」というところですよね。
きっと練習内容も個性的に違いない!
ということで、姫工演劇部の基礎練習に密着させていただきました!
(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)
やっぱりひと味違う?姫工式基礎練習
まずは姫工の目玉であるアクロバット。
舞台を彩る華麗な離れ業は、日々の地道なマット運動によって支えられていました。
その模様を、今回は特別に動画で紹介!
それまで体操を専門的に指導できる人はいなかった姫工演劇部。
けれど、あるOGの叔父さんが、元体操選手でコーチ経験もあるということで指導に来てくれることになり、
器械体操のマット運動が基礎練習になったんだとか。
練習中もまだ技を習得していない部員に対しては、
顧問の先生がフォローに入るなど、安全第一で練習が進められていました。
もし興味のある人は先生などに相談して、
まずはきちんと教えてくれる人を探してみるところから始めましょう。
くれぐれも自分たちだけで始めて、怪我をすることなどないよう注意してくださいね。
さて、みなさんのスゴ技に感動したところで、
ここからはスタンダードな練習を披露してもらうことに。
まずはストレッチ。うん。うん。よくある風景ですね。
うん。よくある風景。
あれ?
何かおかしいと気づいた人はいますでしょうか…?
そう、表情です。
なぜストレッチなのに、みんな口を開けたり、眼球があらぬ方向に動いているのでしょうか。
実はこれ、ストレッチをしながら「言葉で伝える練習」と「表情で伝える練習」もしているのです。
やり方は、身体の各部位を伸ばしながら
やや息声で「だ~ぞ~・ざ~ど~・ど~ざ~・ぞ~だ」と発声します。
「ザ行」と「ダ行」は正確に発音がしにくく、滑舌練習でもよく出てきますよね。
姫工では「1、2、3、4」と掛け声をする代わりに、
ストレッチをしながら滑舌のトレーニングをしているのだそう。
この時のポイントは以下の通り。
[1]息を吐き切ることが大事! 「ぞ~だ」まで終わったら、
さらに腹筋を使って「は~っ」と息を吐き切ります。
[2]口を大きく開けましょう。できるだけ笑顔で!
[3]言いながら目を上下左右に大きく動かしましょう。
[4]ストレッチは反動をつけないように! 顔は前方に向けて。
[5]しっかり脱力した状態で、呼吸は鼻で素早く吸って、口から最後まで吐き切るイメージで。
腹式呼吸が使えているかどうか意識をしてみてください。
[6]伸ばそうとしている筋肉に、しっかり酸素を送り込んでいるイメージを持ってみて。
[7]ストレッチ中のお喋りはNG。気持ちを客席に向けて解放する感覚で実施しましょう。
姫工さんではこうしたストレッチを前屈から開脚、腰ひねりまで丹念に行います。
発声に関してもオリジナリティが。
発声と言えば、みんなで一列に並んで、みたいなのが一般的なイメージですよね。
でも、姫工演劇部は違います。
ご覧の通り、動く!動く!
これ、どうしているかと言うと、リードをする人を1名立て、
リードする人が「あめんぼあかいなあいうえお」など発声した後に、
残りがリードする人に対して話しかけるようにして復唱しているのです。
リードする人もあちこちに動きますので、復唱する側は当然それを追いかけます。
発声しながら台詞のやりとりに欠かせない
「相手に言葉を届ける」ということを自然と身につけさせるのが狙いなわけですね。
実際のお芝居で棒立ちで台詞を言うことはほとんどありません。
だったら、直立不動で発声練習をするよりも、
基礎練習の段階から「言葉」「表情」「仕草」を掛け合わせた表現の練習をした方が効率的では?
そんな疑問から生まれた、現在のこのスタイル。
基礎練習の時間が限られているからこそ、姫工演劇部では効率性を第一にメニューを考えているのです。
また、身体訓練にも怠りがありません。
直立で片手を上に挙げた状態から、
手を挙げた方向に身体をT字に倒してキープするという練習や。
こんなふうに片足を横に上げて。
足をゆっくりと後方に回しながら。
まるで飛行機のようなポーズになってキープする練習など。
他では見られない練習も盛りだくさん。
これ、相当、バランス感覚と体幹が鍛えられていないと難しそうです!
次は、何やらみんなでひとりを囲んでいます。
ま、まさか部内イジメ…!?
なわけは当然ありません。
これは何かと言うと、お互いの信頼関係を築く練習。
中央に立った人は、自分のタイミングで、直立のまま四方八方のどこかに倒れ込みます。
周辺に立った残りの人は、自分の方向に来たらそれを二人でしっかり受け止めます。
これ、ご想像いただけると思いますが、
中心にいる人は周りへの信頼感がないと、とても倒れこむことはできません。
けれど、変に力が入ったり、遠慮をすると、余計に怪我の原因に。
受け止める側も力が入ると逆に相手とぶつかって怪我の恐れが。
コンビニなる人と呼吸を合わせて、タイミングよく、柔らかくキャッチをするのがポイント。
同じ理屈で今度は飛び込みも。
走り出して。
踏み切って。
ジャンプ!
これを全員でしっかりと受け止めます。
チームワークがないと綺麗に受け止めることはできません。
姫工ではこうやって日々の練習でお互いの呼吸を知り、信頼感を醸成しているから、
あんなハードな舞台も怪我を最小限に抑えて乗り越えられているんですね。
姫工演劇部の基礎練習に「定番」はないのだそうです。
なぜなら、今の自分たちに足りないものを獲得するために常に練習内容をアレンジしているから。
今回ご紹介した内容も、これまでの公演で指摘されたダメ出しを改善するために、
ひとつひとつ工夫を凝らし生み出したものだそうです。
どんな時も「今以上の自分たち」を信じてアップデートし続ける。
姫工演劇部の基礎練習には、そんな姫工イズムが流れていました。
INFORMATION
そんな姫工演劇部の次回公演は『高校演劇ショウゲキ・バトル vol.4』。
これは「演劇」ではなく「コント」による観客審査コンテスト。制限時間15分以内のコント・笑劇・小劇をパフォーマンスし、その感動や笑いの衝撃度を審査員と観客が採点します。
姫工演劇部はもちろん、兵庫県内の演劇部11校19チームが大集合! 果たして優勝の栄冠は誰の手に…?
演劇部による2日間にわたる笑いのガチンコバトル、ぜひお見逃しなく。
日程:7月28日(木) 14:10~17:50
7月29日(金) 14:10~18:00
料金:入場無料
会場:イーグレ姫路 姫路市民ギャラリー アートホール
交通アクセス:JR姫路駅から姫路城(北)の方へ歩いて約600m(大手前公園南側)