学校法人清風南海学園 清風南海高校
清風南海高校の練習に行ってみた。
独特の情感溢れる自然体の演技で会場を沸かせた清風南海高校。
個人演技賞女子部門独占という快挙を成し遂げた同校の演技は、
どんな基礎練習に支えられているのでしょうか。
中高生が一緒になって練習をする清風南海さんの稽古場にお邪魔させていただきました!
(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)
いつもの発声にプラスアルファで、さらに効果的な練習を!
清風南海さんの稽古場は体育館の舞台上。
お揃いのTシャツを着た部員たちが楽しそうに練習をしています。
見ていると、何やらあまり見かけない練習風景が。
「これは何だ!?」
ということで、部員のみなさんに練習の秘密を聞いてみました。
まずは部員みんなで円になって向き合います。
この状態で短音を。
「あ・え・い・う・え・お・あ・お」という発声は演劇部のみなさんならおなじみですよね。
清風南海さんでは、この短音に自分たちなりのアレンジを加えています。
まずは誰か1人が「あ」と発声します。
その時、同時に円の中にいる別の誰かを指差します。
すると、残りの全員が「あ」と復唱します。
この時、先ほど指を差された相手は、今度はまた別の誰かを指差します。
そして、次に指を差された人間が「え」と発声しながら、また別の誰かを指差し、
残りの全員で「え」と復唱しながら、指を差された相手は、また別の誰かを指差します。
こうして「あ・え・い・う・え・お・あ・お」を復唱しながら、
交互に指差しを交わし合うのが、清風南海さんの「指差し発声」。
単純な発声のトレーニングだけでなく、演技に必要な反射神経を鍛える訓練にもなっています。
ポイントは、指を差す時は必ず下から振り上げること。
腕の筋力強化の効果もあります。
指を差す仕草にも美しさを追求していきましょう。
慣れてきたら、両手を使って複数の相手に指差しする場面も。
指を差される相手が増える分、自分が差される機会も増えます。
舞台全体に集中力を広げ、指差しの行方に意識を向けながら、
正しい口のかたちで発声をすることが大事です。
清風南海さんでは「あ行」から「ぱ行」に加えて、
「きゃ」「きゅ」「きょ」「しゃ」「しゅ」「しょ」
「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」「にゃ」「にゅ」「にょ」
「ひゃ」「ひゅ」「ひょ」「みゃ」「みゅ」「みょ」
「りゃ」「りゅ」「りょ」「ぎゃ」「ぎゅ」「ぎょ」
「じゃ」「じゅ」「じょ」「ぢゃ」「ぢゅ」「ぢょ」
「びゃ」「びゅ」「びょ」「ぴゃ」「ぴゅ」「ぴょ」
といった拗音も取り入れ、より正確な発音ができるよう練習しています。
意外にキツい? 体力アップにもつながる「ジャンプ発声」とは?
また他にも「ジャンプ発声」という練習も。
これは文字通り発声しながらジャンプをするという内容。
ポイントは、2つ。
まずは短音を3拍子のリズムで発声するということ。
そして、ジャンプしながら手と足をそれぞれ別に動かすということです。
まず手の動きは簡単。
これは2拍子のリズムで頭の上で両手を叩く、両手を下ろすという動作を繰り返します。
一方、足は3拍子。
開く、閉じる、閉じる、開く、閉じる、閉じるという動きを繰り返します。
清風南海の吉武さんが図で説明をしてくれましたので(優しい!)、
こちらをご覧いただいた方がわかりやすいかもしれませんね。
手と足をそれぞれ別の拍子で動かすので、最初のうちはつい頭がこんがらがるかも?
この動きを発声とあわせて行います。
まず最初は3拍子の1拍目で「あ、い、う、え、お」と発声します。
リズムとしては、「あ ・ ・ い ・ ・ う ・ ・ え ・ ・ お ・ ・ 」という感じですね。
2拍目、3拍目のブランクはただ飛ぶだけでOKです。
次に3拍子のリズムのまま「あ あ ・ い い ・ う う ・ え え ・ お お ・」と発声します。
1拍目と2拍目に発声して、3拍目は飛ぶだけということです。
さらに続けて同じリズムで「あ あ あ い い い う う う え え え お お お」と発声します。
繰り返すごとに発声する箇所が増えていく感じですね。
そして最後に3拍子のリズムのまま「あー、いー、うー、えー、おー」と
語尾を伸ばしながらジャンプします。
なかなか言葉にするとわかりづらいのですが、
これも吉武さんが図解で説明してくれました!(優しすぎて涙が出ます!)
ぜひ参考にしてみてください。
これを「あ行」から順に進めていきます。
ジャンプしながら発声するという一見単純な内容ですが、体にかかる負荷は相当ハード。
恐らくよっぽどの体力自慢でない限り、とても「わ行」まで行くことはできないはずです。
もちろん発声ですからジャンプをしたり体が疲れたりしてきても、声が揺れてしまうことは禁物。
ちなみに清風南海さんでは「さ行」までは全員で行い、
以降は個々の体力の限界まで行うんだそう。
疲れた人はそのまま直立で発声を続けます。
それぞれ体力には個人差があると思いますので、
きちんとした正しい発声ができる範囲で、何行まで続くかトライしてみてください。
今日から使えるメニューが目白押し! 表現力を鍛える基礎練習とは?
また感情表現を鍛えるという観点から、実際の台詞を用いた練習も取れ入れられています。
題材はギリシア神話でよく知られる「トロイの木馬」。
まずは全員が一直線に並びます。
そして写真のように台詞を区切り、一人ずつ台詞を言います。
台詞を言う時は、一歩前に出て。
台詞に感情をこめることはもちろん、表情や仕草もしっかりつけます。
四角で囲んでいる台詞は、みんなで言います。
うーん、さすがの迫力。
確かにせっかく発声練習をするなら、
意味のない言葉の羅列ではなく、しっかり気持ちをこめられるものの方がいいですよね。
注意点としては、台詞を言う時に前に出ますが、
元の立ち位置に戻る時にはみ出してしまわないこと。
舞台感覚がないうちは、どうしても歩幅が揃わず、
ひと通り台詞を終えると、一直線だった列がバラバラになってしまうんだとか。
このあたりも単に台詞だけに集中するのではなく、
いろんなことに意識を向けながら発声をする練習になりそうですね。
ルーティンワークになりがちな基礎練習に、いろんな趣向を凝らしている清風南海さん。
みなさんも興味がある練習があれば、ぜひ今日から取り入れてみてはいかが?
清風南海高校演劇部の皆様、どうもありがとうございました!
※今回取材にご協力いただいた清風南海高校さんの
大会までのストーリーは、こちらでご紹介しています!
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