王道エンタメが熱戦を制す!岐阜農林高校が2度目の全国最優秀賞を受賞!
ハイレベルな熱戦が繰り広げられた第62回全国高等学校演劇大会。各校が最高の上演を見せる中、華麗なロングシュートで最優秀賞というゴールを決めたのは、中部日本ブロック代表・岐阜農林高校でした。岐阜農林高校が最優秀賞に輝くのは、07年、島根大会の『躾~モウと暮らした50日~』以来2度目。98年の鳥取大会で優秀賞(上演作品は『実~僕が水をくれるのを~』、12年の富山大会で優秀賞(上演作品は『掌~あした卒業式~』)も獲得している強豪校が、高い完成度で審査員の心を掴みました。
(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)
審査員も観客も愛した青春スポーツ演劇が満を持しての王者に!
最優秀賞受賞作品『Is(あいす)』は、バスケットボールを題材にしたスポーツエンタメ。マイムで試合を再現するズバ抜けた身体能力と、趣向を凝らした装置の数々に、上演直後から客席でも称賛の嵐だったが、審査員の中島かずき氏も「本当に面白かったです」「小気味の良い快作」と絶賛。「跳躍力もあるし、エンドランも早くやっているし、動きの説得力があるから、あれだけ漫画みたいなお話を堂々とやってもついていける」と褒めちぎった。中島氏と言えば、人気劇団・劇団☆新感線の座付作家。同劇団の立ち回りは演劇界随一と評判だが、「漫画みたいなことは劇団☆新感線も結構やっていることなんですけど、それで大事なのは肉体性」と前置きし、「そういう意味ですごく訓練していて、バスケに嘘はなかった」と、アクションエンタメの巨匠からのお墨付きが送られた。
劇団四季のほぼ全作品の舞台美術を手がける舞台美術家の土屋茂昭氏は「バスケットのゴールとアイス製造機が表裏である」ことに着目。ストーリーにリンクした美術プランに目を瞠った。また、シュートに合わせてネットが揺れる仕掛けに対して、「あれでボールが見えちゃうんですね。なかなかプロの芝居でもボールが見えるのは難しいんだけど、本当にボールが見えました」と文字通り脱帽の表情だった。さらにバス停という道具を人間が演じることについても「バスストップがSが出ていくのを止める。ストップさせる。これもみんな掛けているんだなあって」と独自の切り口から岐阜農林の遊び心を解説した。このアイデアについては、衣裳プランナーの加納豊美氏も「もし最優秀衣装デザイン賞というのがあるならばバス停に捧げたいと思います」と茶目っ気たっぷりに語り、会場を笑わせた。
こうしたバス停も含め相次ぐ小ネタに対して、演出家の森さゆ里氏は「それらがすべて成功している稀有な舞台。ひとつも無駄がない」「思いつきではなく、計算された上で、選択された上で、散りばめられている」とシナリオ構成の巧みさを指摘。「元気よくふざけちらしているように見せながら、実にしっかりした構成の中で、肉体もそうですけど、真面目に鍛錬されている。見ていて心が踊る舞台でした」と舌を巻いた。
名取北高校演劇部顧問の安保健氏も「一言で言うと、やってくれた、と。これに尽きる」と笑顔。「みんな心から楽しく演じてこのステージをつくっているのがひしひしと伝わってきて、僕もバスケットをしたいと思いました」「私も青春を味わうことができた。みなさんに感謝します」と岐阜農林の圧巻のステージに魅了された様子だった。
なお、各賞の結果は以下の通り。
●文部科学大臣賞(最優秀賞)
岐阜県立岐阜農林高等学校(中部日本ブロック代表)
『Is(あいす)』
●文化庁長官賞(優秀賞)
青森県立青森中央高等学校(東北ブロック代表)
『アメイジング・グレイス』
静岡県立伊東高等学校(関東ブロック代表)
『幕が上がらない』
埼玉県立芸術総合高等学校 (関東ブロック代表)
『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』
●優良賞
広島市立沼田高等学校(開催県代表)
『そらふね』
北海道北見北斗高等学校(北海道ブロック代表)
『常呂から(TOKORO curler)』
広島市立舟入高等学校(中国ブロック代表)
『八月の青い蝶』
北海道清水高等学校(北海道ブロック代表)
『その時を』
佐賀県立佐賀東高等学校(九州ブロック代表)
『ボクの宿題』
徳島県立阿波高等学校(四国ブロック代表)
『2016』
和歌山県立串本古座高等学校(近畿ブロック代表)
『扉はひらく』
山梨県立白根高等学校(関東ブロック代表)
『双眼鏡』
※全12校の結果。同一賞については上演順。
●創作脚本賞 出口耕士朗・藤井良平(和歌山県立串本古座高等学校)
●舞台美術賞 広島市立舟入高等学校
●内木文英賞 広島市立沼田高等学校
なお、岐阜農林高校、青森中央高校、伊東高校、芸術総合高校の4校は、8月27日(土)・28日に国立劇場大劇場で開催される第27回全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演への出場が決定。
また、本大会の模様は、9月17日(土)15時よりNHK-Eテレにて放送を予定している。