渡辺源四郎商店
【観劇支援企画】渡辺源四郎商店最新作『イタコ探偵工藤よしこの事件簿』を高校生以下無料ご招待!
青森中央高校演劇部顧問・畑澤聖悟率いる渡辺源四郎商店。86歳の舞台俳優・宮越昭司をはじめ、年齢もバックグラウンドも様々な劇団員が集う“なべげん”では、22名の劇団員の15名を高校演劇出身者が占める。今回は、全国一に輝いた『修学旅行』、『河童』のオリジナルメンバー・工藤良平と、2012年の全国最優秀作品『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』のオリジナルメンバー・松野えりか、奥崎愛野の3人が登場。3人とも、地元・青森で職場や大学に通いながら演劇活動を続けている。高校時代の想い出や、高校演劇とプロ演劇の違い、そして最新作『イタコ探偵工藤よしこの事件簿』にかける意気込みを聞いた。
(Text by Yoshiaki Yokogawa Photo by Shohei Yamashita, Chiharu Saigo)
お芝居が好きだから、お芝居からは離れられない。(松野)
――青森中央高校演劇部のメンバーとして3年間を高校演劇に捧げた3人。在学中の中でも特に印象に残っている想い出は?
工藤「ブロック大会、県大会、東北大会と同じ作品を演じ続けていると、どうしても飽きやマンネリが出てしまう。そんな時、畑澤先生に“同じ毎日の積み重ねがつまんないから演劇やってるんでしょ? だったら毎日同じ芝居しないでよ”って言われたんです。僕にとって、それはすごく革命的な言葉でした。そこから周りの台詞に対して、毎回違う反応をしてみたり、台詞がない場面でも自分の感情の流れを組み立てながら、いろんな仕草を入れてみたり、自分の中で工夫を試みるようになりました」
松野「私も、もともと同じ演技は二度とできないタイプ。それでよく周りのみんなを困らせていました(笑)。高2の東北大会の時も、クライマックスで台詞が飛んじゃったことがあって…。内心かなり焦りましたが、何とかうまく誤魔化しました(笑)。私自身のこだわりとして、台詞や動きをあらかじめカチッと決めてしまうんじゃなくて、舞台に上がったら、その時の気持ちを大事にして演じたいんです。もちろん相手がアドリブに対応できるのかちゃんと見極めないといけないけど、自分の気持ちに正直に演じる方が、終わった後もスッキリした気持ちになれるんですよね」
奥崎「私は『もしイタ』でイタコのおばあちゃん役をやっていたんですけど、『もしイタ』は衣裳やメイクで助けてもらえないから、老け役は本当に大変でした。もう腰や膝が曲げすぎて痛い(笑)。実際にうちのおばあちゃんがイタコに会ったことがあって、その時の話なんかを聞きながら役作りをしました。『もしイタ』は自分にとって忘れられない作品。全国出場が決まった帰り道のバスはずっと嬉しくて泣いてましたね」
――高校卒業をする時に、このまま演劇を続けようか、それともきっぱり足を洗おうか、悩んだことはありませんでしたか?
工藤「僕は地元の短大に進学したんですよ。卒業しても演劇がしたいなとは思っていたけれど、具体的なことは全然考えていなかった。それで、ある日、畑澤先生のところに行ったら、次のなべげんの公演ポスターを見せてもらって。そこにいつの間にか僕の名前が入ってた(笑)」
――え! 勝手に名前が入ってたんですか?(笑)
工藤「そう(笑)。でも演劇は好きだし、畑澤先生のことはすごく尊敬していたから、なべげんでやろうと決めました。そこからもう今年で入団7年目になります」
奥崎「私の場合は、もともと映画女優になりたかったんです。だから、卒業したらバイトをしてお金を貯めて、東京に行ってオーディションを受けようと思っていました。だから、その間は芝居から離れていたんです。でも、いざお芝居をやらない時間を過ごすと、もう我慢ができなくて(笑)、やっぱりお芝居がしたいな、と。なべげんは、私たちにとってすごく身近な劇団だったし、ここなら思う存分お芝居ができると思って、畑澤先生に入れてくださいってお願いをしました」
松野「やっぱりお芝居が好きだから、お芝居からは離れられないんですよね。実は私は、お芝居をやめるつもりだったんです。演劇は好きだけど、これでは食べていけない。手に職をつけようと、卒業後は看護の大学に進学しました。でも、そんな私を畑澤先生はずっと信じて誘ってくれた。大学を卒業したら私は看護師になります。きっともうすぐ実習も本格化するので、今のように練習に打ちこむこともできなくなると思う。だから、私は、毎回の舞台をこれが自分にとっての最後の舞台になるかもしれないという覚悟を決めて臨んでいます」
役者って毎日を明るく生きられる仕事だと思う。(工藤)
――高校演劇からプロの演劇へ。演じるフィールドが変わったことで変化したこと、成長したことはどんなところですか?
工藤「なべげんに入って、一番勉強になったのは、年上の役者さんの芝居を実際に近くで見られるようになったこと。やっぱり人の演技を見るのは勉強になります」
松野「私もそれはすごく実感します。特に高校時代の『もしイタ』は、60分ほとんど出ずっぱり。袖に引っ込むことがあんまりなかった。だから今は稽古場で先輩たちの演技が見られるだけで、新鮮だし、ワクワクしますね」
工藤「やっぱりお客様からお金をいただいて舞台に立つ以上、客席からの視線は厳しくなります。初舞台のアンケートでは、“若い役者の声がうるさくてキンキンとした”と書かれてしまって。あれはすごくショックでしたね」
松野「高校時代は、大きな劇場でやることが大きいので、声も動きも自然と大きくなる。でも、プロになってからは小劇場がメイン。逆に大きな演技は不自然に見えてしまうことがある。ちょっとした指先の表現だとか、先生がよく言っていた“神は細部に宿る”ということが、より求められている世界なんだということは、すごく実感しています」
奥崎「高校時代はとにかくいかに目立って印象に残るか。そのことを念頭に置いて役をつくっていました。でも、今はその目線がだんだん変わってきて、役の感情をきちんと理解して、それをどう表現するかを一番に考えるようになった。まだなべげんに入って9ヶ月だけど、高校時代よりもよりリアルな演技に変化してきたかなという感覚はあります」
松野「よくつまらない演劇のたとえとして高校演劇を出す人がいるけれど、私はそれは違うと思っていて。高校演劇は、大人も子どももみんな高校生が演じる。会場も、一般的な劇団が上演するところよりもずっと大きいところがメイン。それに、60分という時間制限だってある。そういういろんな制限の中でやるのが高校演劇であって、大人がやる演劇と比較になるものじゃないんですよね。それは青森中央高校にいた頃から思っていたし、今こうして自分の演じる環境が変わってなお強く思います」
――公演の練習が始まれば、自分の生活の大半を演劇が占めます。役者として生きるってどういうことなのか。みなさんの考えを聞かせてください。
工藤「役者をやっていると、本当に日々すべての出来事が自分の演技の引き出しになる。嫌なことがあったとしても、この感情が演技の糧になると思ったら、ポジティブに捉えられるし。そういう意味では、役者って毎日を明るく生きられる仕事だなと思う」
松野「そうですね。とにかく毎日が勉強。周囲の人の演技を見ているだけで、いろんなことが吸収できるし、自分の知識もどんどん広がっていく。私、実は本番よりも、稽古の方が好きなんです。みんなでひとつのものをつくり上げていくプロセスが楽しい。だから、今、こうやってなべげんで役者として生きられる毎日が本当に楽しいんです」
奥崎「私にとって、演じるということはもう人生では決して切り離せないもの。役を与えられてからは、本番までずっとその役が私の一部になっているし、普段の生活をしていても、この役ならどんな生活をしているんだろうと、いろいろ考えてしまう。一言で言えば、役者は、私の生きがい。きっと演劇から離れたら、私の人生はつまらなくなるんだろうなと思います」
限られた時間を全力で過ごしてほしい。(奥崎)
――それでは、今回の役柄について教えてください。
奥崎「今回の『イタコ探偵工藤よしこの事件簿』は、イタコの工藤よしこが事件を解決するテレビドラマと、それを見ている男のふたつの世界が同時進行しながら、それぞれの世界でいろんな謎が暴かれていきます。私が演じるのは、イタコの工藤よしこ役。イタコの能力を使って事件を解決する役どころです。“火サス”の主人公になったつもりで、鮮やかにポーズを決めながら恰好よく演じたいですね」
松野「私は、テレビドラマの登場人物で、死体の第一発見者となる仲居さん役を演じます。何度も死体を発見するというツイてない役どころで、そのたびに悲鳴をあげたり泣いたり大変なんです(笑)。ひたすら泣く場面が多いので、ワンパターンにならないよう、いろんな泣き方を、今模索しています」
工藤「僕も同じくテレビドラマの登場人物で、巡査役を演じます。実はこの役、1週間前に決まったばかりで、まだ僕も手探り状態なんです。畑澤先生は、直前まで台本をどんどん変えていくスタイル。ここからまたどう変わっていくかは、僕たちにもわからない(笑)。でも、だからこそ変に慣れることなく、ギリギリまで新鮮な気持ちで練習に臨めるし、必死になれるんです。その必死さが求められているのかなとは思いますね」
——では、最後にこれを読んでいる高校生のみなさんにメッセージをお願いします。
松野「やっぱり自分に満足しちゃいけないと思うんです。台詞が頭に入って、動きが体に馴染んだら、さあ完成とならないのが演劇の面白さ。そこからいくらでも完成度を高めていける余地があると思います。だから、決まったひとつのかたちにとらわれるのではなく、その時その時の空気や気持ちに合わせて、柔軟に演技を変えていってほしいですね。舞台は、幕が上がれば自分のもの。自分勝手にコロコロ演技を変えていくのはダメだけど、その瞬間に湧いてくる感情や感覚を大事にしながら、舞台を楽しんでください」
奥崎「とにかく一生懸命見せてほしい。今しかできないことを、なんて高校生の頃に言われてもよくわからないかもしれませんが、でも今しかできないことはきっとある。だから、ぜひ一秒もムダにせず、限られた時間を全力で過ごしてほしいなと思います」
工藤「役者にとってムダな経験なんて何ひとつないですから。いろんな経験をして、自分の幅を広げてほしいと思います。僕も、高校生活で唯一心残りがあるとすれば、部活が忙しすぎてまったく恋愛できなかったこと(笑)。やっぱり恋愛は大事なので、ちゃんと高校時代に味わっておきたかったな (笑)」
——じゃあ、次はラブストーリーなんてチャレンジしてみたいですね。
工藤「やりたいですね! いつもコミカルな三枚目の役が多いので、次は二枚目の役で思い切りラブストーリーとか演じたいです!」
【特別企画】高校生以下なら無料でなべげんの最新作が楽しめます!
渡辺源四郎商店は春と秋の本公演は本拠地・青森だけでなく東京公演も行っており、今回の第18回公演『イタコ探偵工藤よしこの事件簿』も、こまばアゴラ劇場でなべげんらしい笑って泣ける人情喜劇をお届けします。さらに同劇団の「より多くの高校生に観劇の機会を増やしたい」という想いから、高校生以下を対象とした無料招待企画が実現しました! 理想の芝居をかたちにするために欠かせないのが、様々な演劇にふれ、自分の世界を広げること。ぜひこの機会を活用し、“なべげんワールド”からいろんなことを学びとってほしいと思います。興味のある方はすぐになべげんに問い合わせを! きっと新しい発見のつまった時間になるはずです。
<無料招待企画日程>
■青森公演:2013年11月3日(日)~7日(木) 高校生以下全日無料
※要メール予約(予約締切:2013年10月27日)
■東京公演:2013年11月17日(日)10時のみ無料
※要メール予約(予約締切:2013年11月10日)
<予約受付方法>
nabegen-ticket@nabegen.comまで、氏名、日時、電話番号、複数枚数希望の場合は枚数を必ずお書き添えの上、メールをお送りください。
渡辺源四郎商店からの返信メールが届いて予約完了となります。
3日以内に返信がない場合は渡辺源四郎商店HPのアクセスよりお問い合わせください。
※事前予約のない場合は、高校生以下も当日学生料金となります。
PROFILE
■渡辺源四郎商店第18回公演『イタコ探偵工藤よしこの事件簿』
畑澤聖悟、工藤千夏
<キャスト>
工藤由佳子、三上晴佳、山上由美子、工藤良平、奥崎愛野、佐藤宏之、夏井澪菜、松野えりか、山田百次(劇団野の上)、北魚昭次郎(フリー)、畑澤聖悟
<青森公演>
2013年11月3日(日)〜7日(木)[全6ステージ]
アトリエ・グリーンパーク
11月3日(日)15:00〜
11月4日(月・祝)15:00〜、19:30〜
11月5日(火)19:30〜
11月6日(水)19:30〜☆
11月7日(木)19:30〜
☆=11月6日は、DVD撮影のため限定30席で当日券はございません。また、スペースの都合上、開演後の入退場はできませんのであらかじめご了承ください。
<チケット>
一般予約:2,500円/学生予約:500円
一般当日:2,800円/学生当日: 800円
高校生以下:無料(10/27までに要予約 nabegen-ticket@nabegen.com)
※事前予約のない場合は、高校生以下も当日学生料金となります。
(日時指定・全席自由・税込)
<東京公演>
2013年11月15日(金)~17日(日)[全5ステージ]
こまばアゴラ劇場
11月15日(金) 19:00〜☆
11月16日(土) 15:00〜、19:00〜
11月17日(日) 10:00〜★、13:00〜
☆=演劇公演ではなく、無料関連イベント「ラジオドラマとトークで味わうイタコ探偵工藤よしこの世界」(受付開始18:30、開場18:45)が行われます。
★=モーニング割引
<チケット>
一般予約:3,000円/学生予約:2,000円/高校生以下:500円
一般当日:3,300円/学生当日:2,300円/高校生以下当日:800円
★=モーニング割引[11月17日(日)10:00]
一般予約:2,000円/学生予約:1,000円
一般当日:2,300円/学生当日:1,300円
高校生以下予約:無料(11/10までに要予約 nabegen-ticket@nabegen.com)
※事前予約のない場合は、高校生以下も当日学生料金となります。
(日時指定・全席自由・税込)
○チケット取扱い
渡辺源四郎商店 080-1269-6158
○公式ホームページ
http://www.nabegen.com/