第60回全国高等学校演劇大会に行ってみた。【3日目】
ついに、全12校の上演が終了しました。
残すは、注目の講評のみ。
高校演劇生の2013-2014シーズンがついにフィナーレを迎えます。
結果発表の前に、最終2校の上演内容をご紹介!
講評結果に波乱を起こしそうな快演が続いた3日目を一緒に振り返りましょう。
(Text&Photo by Yoshiaki Yokogawa)
桐生高校『通勤電車のドア越しに』
最終日のトップバッターは、先日、『ゲキ部』で記事を公開するや否や
大きな反響を呼んだ桐生高校による『通勤電車のドア越しに』。
緞帳が開くと、そこは暗転の舞台。
男たちの声だけが聞こえてくる幕開けに戸惑いを感じはじめる頃、
ちょうど明かりがつき、舞台には電車のドアに挟まった中年男の姿が。
この大胆な幕開けで空気を掴むと、
そこからは今回12校で唯一の男子役者のみによる小気味のいいコメディで
観客をたっぷり楽しませてくれました。
ハマれば一気に会場を味方につけるコメディですが、
計算通りに笑いをとることは至難の業。
一度、スベるとドツボにハマる恐怖だってあります。
今回、顔がドアの向こうに飛び出している主人公は、当然、車内の様子は見えません。
このシチュエーションの妙を存分に活かしたギャグが
しっかりと笑いをとれていたところに、同校の上手さを感じました。
わかりやすい内容ではありますが、不条理劇のエッセンスも盛り込まれた本作。
主人公と坂本、斎藤の関係性は劇中では明確にはされていません。
リアリティを無視した展開に疑問を感じた人もいるかもしれません。
ただ一方で、「夢を諦めない」という大きなメッセージを持ちつつ、
それを全力投球でぶつけるのではなく、独自の「気張らなさ」というべき温度感で
表現できていたところに個人的には魅力を感じました。
観客の中には「最初にドアの大道具を出して、
すぐにそれを袖にハケさせてポールだけで表現したアイデアが面白い」といった
演出の上手さに感嘆の声をあげる人もいれば、
「坂本が好き!」「森さんが好き!」「氷川やすしが好き!」と
まるで人気投票のようにお気に入りの登場人物の名を挙げ合う人も。
桐生高校演劇部のみなさん、お疲れ様でした!
滝川第二高校『志望理由書』
昨年夏の地区大会からスタートした2013-2014シーズン。
この3日間の上演校だけでなく、のべ2500校にも迫る全国の上演校の大トリを飾ったのが、
滝川第二高校の『志望理由書』でした。
推薦入試の承諾をとるべく、進路指導の教員に志望理由書をチェックしてもらう主人公。
天真爛漫な女子高生と偏屈者の教員という凸凹コンビが織りなす会話は
実にユーモラスで萌えポイントが盛りだくさん。
女子高生を演じた生徒も達者でしたが、教員を演じた男子生徒が実に良い味わいを出していました。
恐らく演技面では難点の多いタイプですが、この役に限ってはそれが魅力となって成立していた感が。
残り2人の登場人物はいるものの、基本的にはこの2人による会話劇がメイン。
だからこそ2人芝居を支える役者それぞれの個性と魅力が芝居の成否を握るのですが、
この2人はその大役に見事に応えてくれました。
12校の上演を振り返ってみても、
これだけ丁寧に人と人との関係性を深く掘り下げられていた芝居はなかったのでは?
2人の距離が近づき、独特のコンビネーションを築いてくさまに、多くの観客が夢中になっていました。
だからこそ、終盤、校則違反が発覚した主人公に、教師がくだす決断は重く切ない。
また、それぞれが逆境や不安を跳ねのけ夢を追いかけようと決意するラストシーンに、
目頭がじんわりと熱くなりました。
「高校演劇って何だ」という大きな波紋を起こした本大会でしたが、
最後の最後で「高校演劇だろうと、プロの演劇だろうと、いい芝居はいい」という
理屈抜きの真理を同校が体現してくれたように思います。
滝川第二高校演劇部のみなさん、お疲れ様でした!
すべての上演校に、最高の拍手を!
誰もが待ち焦がれ、夢見た第60回全国高校演劇大会も、これですべてのラインナップが終了。
あとは講評を控えるのみとなりました。
果たして頂点に輝くのはどの学校なのか。
『ゲキ部!』は結果発表の瞬間まで完全レポートします。
どうか会場で結果をご覧になれないみなさんは、
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すべての上演校のみなさん、本当にお疲れ様でした!